エンタープライズサービス管理(ESM)の最もシンプルで分かりやすい定義は、ITサービス管理(ITSM)の原則と機能を業務で活用し、パフォーマンス、サービス、成果を改善するというものです。
ESMは、あらゆる形態のエンタープライズサービスに対する可視性とアクセスを改善し、サービスデリバリーを迅速化するほか、インシデント、問題、変更、リクエスト、サービスアセットなどの主要なITSMプロセスと設定管理ももちろんサポートします。
消費者の生活のあらゆる側面に速やかにアクセスして対応する最新のテクノロジーとソフトウェアが広がりを見せています。IT部門とやり取りするにしても、人事(HR)、法務、設備、教育、セキュリティ、営業、マーケティング、R&D、財務といった社内のその他多くのサービス提供部門とやり取りするにしても、従業員は日々の業務で同様のエクスペリエンスを期待しています。
そのため、企業は、従業員のワークプレイスサービスを提供するためのアプローチを見直す必要があります。新入社員研修などのバックオフィスサービスは、電話、メール、スプレッドシートのファイリングなど手作業だけで行われていて、多くの場合それは今でも変わりません。デジタルの世界では、従業員は共通のサービスカタログを通じてこれらのサービスに簡単かつ迅速にアクセスすることや、リクエストにすぐに自動的に対応してもらえることを期待しています。IT以外のサービスのもう1つの特徴は、エンタープライズサービスは複数の業務機能に及び、通常はそこにITサービスが含まれているという点です。
ITサービスでもIT以外のサービスでもサービスはサービスであり、基本的なITSMの概念、原則、機能が適用されます。サービスを定義、作成、導入、サポート、改善する必要があります。
サービス管理について考えるとき、すぐに思い浮かぶのがサービスデスクやヘルプデスクです。しかし、これはESM戦略の1つの要素にすぎません。次のようなその他の主要機能もエンタープライズサービス管理を導入するきっかけになります。
ITSMとESMは概念的には同じですが、違いもあります。違いの1つは、多くのESMのユースケースは複数の業務機能および部門のサポートに依存するという点です。つまり、コラボレーションを必要とし、部門間でサポートサービスを共有する必要があります。ツールだけでなく、プラクティス、プロセス、ワークフローも共有します。これは、ITIL 4 (ITインフラストラクチャライブラリ)のアプローチをESM戦略に適用するきっかけとなります。ITIL 4のアプローチでは「価値を一緒に作っていくこと」を目指しており、組織的な変更も必要です。IT部門はデジタルトランスフォーメーションの全過程で信頼できるアドバイザーとなり、共有サービスの概念とその管理を業務機能に組み込むことができます。
エンタープライズサービス管理は、業務機能や部門がサイロ化して事後対応型で時間のかかる組織を、効率的でユーザーや企業の満足度が高い統合作業環境に変革するために役立ちます。ESMによって、ITSMは実証済みの利点を業務機能に拡張して以下を実現できます。
ITSMへの投資、ナレッジ、スキル、ESMのエクスペリエンスを活用することで、サービス管理ソリューションの投資収益率を高めて運用コストを削減することができます。
コロナ禍において、従業員エクスペリエンスの重要度が高まっています。在宅勤務の従業員が大幅に増加したことにより、IT部門や事業部門はVPNアクセスや業務機器の注文といった新たに増加している需要に対応しなければならないまったく新しい状況に置かれています。ロックダウン中にリモートワークに迅速かつ容易に方向転換した連邦司法機関は、ESMを活用してこのような問題にうまく対応した例の1つです。
コロナ禍において、多くの企業がデジタル変革を推進しています。この新しい働き方はコロナ禍の終息後も長く続き、ITSMの概念やツールがその利点とともにESMのユースケースに広がるきっかけとなるでしょう。
調査回答者の77%が、カスタマーエクスペリエンスの改善がIT部門以外にサービス管理を拡大するためのビジネスドライバーであると述べています。
ITサービス管理(ITSM)と同様に、ESMはサービスを提供およびサポートするための戦略的アプローチを企業全体にわたって提供します。これを支援するのがIT Infrastructure Library(ITIL)です。ITILは設計から廃棄に至るまでのサービスデリバリーに関するベストプラクティスフレームワークであり、継続的な改善を重視しています。ITIL 3はインシデント管理などのプロセスに注目していましたが、組織内および組織間でのワークフローやインシデント管理の役割には重点を置いていませんでした。バリューストリームアプローチを採用しているIT4ITのような他の業界標準やアジャイル手法は、このような重要な側面に対応しています。
ITIL 4では考え方やアプローチが変わり、需要から価値に至るまでのサービスを管理します。
ITIL 4の4次元モデル、つまり「組織と人」、「情報とテクノロジー」、「パートナーとサプライヤー」、「バリューストリームとプロセス」は、サービス管理に対する全体的なアプローチを保証します。このモデルはIT機能以外にも適用できます。
ITIL 4のサービスバリューシステム(SVS)は、組織のコンポーネントとアクティビティがどのように連携して価値の創出を促進するかを説明します。SVSには、指針、ガバナンス、サービスバリューチェーン、継続的な改善、プラクティスが含まれています。ITIL 3のプロセスはITIL 4でプラクティスに置き換わりました。
ITIL 3とITIL 4の基本的な考え方と概念は同じです。ITIL 4は価値と成果に重点を置いてITIL 3を拡張したものと見なすことができるため、実証済みのESM基盤となっています。
IT部門と事業部門は、手作業が多すぎてミスを犯しやすいワークフロー、増え続ける要求、サービスのレベルや品質に不満を持つ従業員など、さまざまな課題に直面しています。次のようなAIと機械学習テクノロジーが、ESMを次のレベルに引き上げます。
エンタープライズサービス管理(ESM)の採用と拡張において人工知能(AI)が果たす役割の詳細については、下記のリソースリストのAIがエンタープライズサービス管理(ESM)を可能にする方法をご覧ください。
ITサポートに当てはまることはESMにも当てはまります。AIは運用を改善し、成果を向上させます。詳細はAIによるITサポート強化のための10のヒントをご覧ください。
ITSM関連であれESM関連であれ、問題をツールだけで解決することはできません。まずサービス中心のアプローチを作成して適用し、次にITSMの原則とプラクティスを活用してサービス管理を採用し、それらを業務機能に拡張する必要があります。
ESMを実装する目的、結果として得られる要件、期待されるビジネス成果が何であるかを理解することが重要です。
これにより、ESMプロジェクトの範囲、組織の準備状況、重要な成功要因を判断することができます。次の点を考慮する必要があります。
ESMツールの評価プロセスと選択基準に関するこれら7つの基本的な質問についてはESMバイヤーズガイドをご覧ください。
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